広尾学園のICT教育カンファレンスに参加してきたまとめ。長文。

先日(12月21日)、「広尾学園×iPad×ICT教育」カンファレンスWinterに参加してきた。
– 特設サイト | 広尾学園×iPad×ICT教育2013 Winter
http://hirogaku.jp/ict/2013/w/

当日のうちにアップされていたブログ記事はこちら。授業風景などの写真がまとまっている。
– トピックス | 「広尾学園×iPad×ICT教育」カンファレンス
http://www.hiroogakuen.jp/weblog/archives/21004

先日、このカンファレンスに申し込んでから、とても楽しみにしていた。

今の職場と比較していたり、個人的に興味を持っているサービスを目の当たりにしたり、独自の工夫がこらされていたり、と多々気付いた点をまとめる。

当日の概要

ICT教育に関しては、国内トップであろう広尾学園。過去に開催されたICT教育カンファレンスは保護者会とバッティングしてしまい、今回が初参加で初広尾学園となった。
 
外観は、全面ガラス張りで、とても清潔感のある雰囲気。ただ、夏場は熱くなるのでないかという心配が湧く。
到着早々配布されたのは、本日の実施要項とiPad活用ガイドライン。
iPad活用ガイドラインに関しては、こちらでダウンロードできる。

本日の流れ
・10:40-11:25 [公開授業1時間目] ・11:35-12:20 [公開授業2時間目] ・12:20-13:10 昼食
・13:10-13:55 各種講話とパネルディスカッション

一部時間に変更はあったものの、このような流れだったので、
・午前の部①:校内を歩き回って気付いたハード面
・午前の部②:授業の様子や使っていたサービスなどのソフト面
・午前の部③:教務やクラス運営の体制
・午後の部:3人の講話とその後のパネルディスカッションについて
・まとめ
といった構成でまとめる。

午前の部①:校内を歩き回って気付いたハード面

足を踏み入れてから感じるのは、とても綺麗な校舎だ、という点。
 
なんというか、細部にまで配慮が行き渡っている感じ。
 
いたるところに緑が用意され、清潔感がある。写真は撮らなかったが、中庭やグラウンドにも至る所に見受けられた。
こういった部分のメンテナンスは用務員の方か業者に依頼してやっているのだろうな、と予想はできるが、

トイレ掃除までやらせているとは思わなかった。

次にICT機器関連の様子。
WiFiのSSIDがほぼ全てのフロアで10個程常時表示されたのに、アクセスポイントが全く見当たらなかった。確かに、見た目を考えると天井裏などにしまった方が良いと感じた。
廊下で大きく目についたのが、
 
ノートPCの充電ボックスとiPadの充電/同期用端末だ。廊下に無造作に置かれていて、普段からこういった管理のされ方をしているのか周囲の人に聞いてみたが、把握していなかったので、実態は不明。
ただ、こういった充電用の端末は校内にいくつか存在するという表現だったので、何かしらの管理体制となっていることを期待する。

教室には、全てプロジェクタが常設されているとのことだったので、どのような接続方法なのか気になっていた。
 
すると、壁からRGBケーブルと音声ケーブルが生えていた。なので、教卓は中央でなく、全体的に窓側のコンセント付近が定位置になっているようだった。
プロジェクタが教室前方のホワイトボードの中心に照射されるので、その都合もあるかもしれない。
ちなみに、山梨英和に勤めている友人でも教室にはプロジェクタが常設されているらしいが、AppleTVを使っての接続をしているので、ケーブルの煩わしさなく教室内の生徒全員の端末を表示できるようになっているらしい。デメリットとしては、AppleTVとの接続が不安定になっているため、表示が途切れることがあるそうだ。

午前の部②:授業の様子や使っていたサービスなどのソフト面

各先生方が、色々なサービスを使って、工夫していた。
普段の授業でどこまで活用しているのかははかりかねるが、使っている雰囲気からすると、割と頻繁に利用しているのではないかと予想できた。

各公開授業で利用していたサービスを列挙すると以下。
・FreeMind
・FreePlane(MindMap風のプレゼンツール)
・Moodle
・Star Walk(iPadの天体観測アプリ)
・keynote
・Numbers
・iPadのタイマー
・ロングマン英和辞典(iPadアプリ)
・GoogleDocs(スプレッドシート/フォーム)
・GoogleSite
・GoogleEarth

特別な利用をしているわけではなく、それぞれのサービスの機能をそのまま利用しているだけだったので、特別感はなかった。
一応、写真におさめたが、

アップルで働くまで、イノベーションというのは「今にない、新しいものを作ること」だと思ってた。でもそれは違って、イノベーションというのは「未来にある普通のものを作ること」なのです。この違いを理解できるまでかなり時間がかかった。

という言葉があたまをよぎる。

 
Moodleに関しては、まだ導入してから日が浅いとのことなので、私も追いつけるのでないかと感じた。
ただ、日本Moodle協会と提携しているとのことなので、テーマもキレイに整っていたし、私個人の趣味でやっているようなものとは全く異なる仕上がり。
小テストも細かく作り込まれていて、生徒たちが集中して1コマの授業を過ごしている印象だった。

 
英語の授業では、ロングマンのアプリを使って、意味調べなどを行っていた。

 
GoogleDocsは、スプレッドシートのフォーム機能を活用し、アンケートを実施して生徒たちの発言を集めていた。
学習支援システムでもできる機能なので、この使い方はどうなのかな、と疑問を感じるところはあるし、生徒が主体的に学ぶ姿勢をもっている学校ならではの活用方法でないかと感じた。


授業中の課題を、ドキュメントやスライドにまとめるのでなく、GoogleSiteのページにまとめる、といった使い方もしていた。
GoogleSiteは、授業だけでなく、ホームルームでもクラスの掲示板的な用途で使われているという説明があった。
個人的には、GoogleSiteは使いづらいので、BloggerやMoodleなどで代替した方が無難ではないかと思う。

午前の部③:教務やクラス運営の体制

廊下には余計な掲示物は無く、必要な情報は際立つように掲示されていたし、
 
ちょっとしたユニークな点もかいま見れた。

 
医進サイエンスコース独自の掲示や情報共有にも工夫が見られ、見習うべきところが多くみられた。
特別教室利用の時間割掲示はすぐに取り組んでみたい。

ただ、少々見づらかった点もある。

校内の設備の配置図が各フロアごとにイーゼルに置かれていたのだが、なんとも見づらい。

それと、教室内で気になった点がいくつかある。
内線といったハード的な面と、掲示物の管理に関するソフト的な面だ。

 
まず、各教室には内線が用意されていた。天井にはスピーカらしきものがあったので、校内放送以外での連絡手段だと思われる。
また、ゴミ箱の周辺には、分別に関する具体的な例が挙げられており、当然の配慮が見受けられた。
教室での板書は当然のように全てホワイトボードで、特別教室のサイエンスラボでは

このような大きく特殊なホワイトボードも置かれていた。

掲示物で目立っていたのは、
 

マインドマップやマンダラート、特性要因図(フィッシュボーンチャート)を模した目標や取り組みだ。
生徒たちはどこまで理解して使っているのか判断できなかったが、ビジネス書好きが好きそうな取り組みが多くみられた。

午後の部:3人の講話とその後のパネルディスカッションについて

講話では、
・「広尾学園のICT活用とこれからの教育」金子暁
・「ICTツールを用いた研究的な学び-2ndステージへ-」木村健太
・「インターナショナルコースのICT活用と未来」マーク・マクルアー
という3方のお話が聞けた。

金子先生のお話では、Scratchに取り組み始め、「導入→活用→創造」という大きな流れの中で、「創造」の一つの手段として取り組んでいる、という目標がきけたので、自信が持てた。他にも、

オーストラリアでICT予算がついたとき、学校は2つに分かれた
とにかく立派な機器を入れようとする学校と地味に環境を整えようとする学校と
結局、勝ち組になれたのは後者だった。

など、以前聞けた話しも振り返られた。

木村先生のお話は、相変わらずとても楽しい雰囲気で進んだ。
夏には話しに挙がってこなかった「ChromeBook」というキーワードが聞けたのは良かった。ただ、自宅に帰ってから調べる限り、ChromeBookに関する良い情報は見つけられなかったので、詳しい話しをまた聞きたいものだ。
「教員の在り方」という点では、まさに自分の感じているモヤモヤを明確に言語化してくれていたので、とても参考になった。
「授業の在り方」については、MOOCs//edX/Udacity/Coursera/EDuPAといったキーワードが紹介されていたので、今後調べてみようと思う。それと、反転授業に取り組み始めているという情報は刺激になった。
企業に向けたメッセージとして、「良いものを集約するようなフィルタ」「アーカイブ系のアプリ」といった話しは、当事者だからこそでてくる気持ちだし、こういったことを堂々と人前で話せるという点は刺激になった。

マーク・マクルアー先生に関しては、マインドマップやMoodleが好きななんだなぁ、ということがわかった。
Moodleの「ドーナツ」「バッチ」といった機能を効果的に使うことで、より関心をひけそうだ。

最後に、パネルディスカッションの時間があった。
中学生なのに、シッカリした子たちだなぁという印象だった。
当然のようにガジェットを使いこなしていて、サラリーマンと同等のリテラシーを感じた。

まとめ

アップルで働くまで、イノベーションというのは「今にない、新しいものを作ること」だと思ってた。でもそれは違って、イノベーションというのは「未来にある普通のものを作ること」なのです。この違いを理解できるまでかなり時間がかかった。

という言葉が全てを物語っているように感じた。
特別先進的なことをしているわけでなく、少し未来の学校で当然やっているであろう指導方法や環境を整えている、というような感想が近い。

何から取り組んでいくのが良いのだろうか、余計に迷い始めている。
なので、とりあえず片っ端からやってみることにする、そんな決心を与えてくれた一日だった。

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